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パイプのコラム

ZIPPO

ZIPPO。煙草好きな人なら、一度は買ったことがあるだろう。いわゆるオイルライターという奴。ライターでは一人勝ちの感もある。喫煙具店に行くと、色々なデザインがあしらわれたZIPPOをみかける。ZIPPOはなんといっても炎が綺麗。炎はまっすぐに高く伸びていく。マッチのようにおとなしく、それでいてガスライターのように火力がある炎だ。

実は僕にとってもZIPPOは二十歳くらいのころから気になるアイテムだった。なんといってもあのパカッ、シュッ、カチン、という音と、その打撃感である。なんだかアメリカの戦争映画のスターになった気分にさせてくれる。その形状のバランスも完璧。ハマる人の気持ちもよくわかる。ほんとうに美しいアイテムだと思う。

そもそも僕は子供の頃から火遊びが大好きだった。よく家の裏で親に見つからないように友達と火遊びしたものだった。紙を焼いたり、葉っぱを焼いたり、色々なものを焼いては火を見てワクワクしていた。自分の部屋でもロウソクに火を点けて、じっと火を眺めていたものである。火を見るのは全く飽きなかった。それが今のパイプ好きにつながったのだと思ってもよかろう。

そんな子供心と、映画スターを気取ったようなナルシシズムが、ZIPPOにはあると思う。だから僕も二十歳のときに買ったのだ。今思えば、自分にとって一番最初の贅沢はZIPPOだったと思う。まだフリーターだった僕にとって、ファストフードのハンバーガーさえ高いと感じていたのに、1本6000円もするZIPPOはあまりにも高級であった。たかがライターに6000円である。どうしてもその値段が信じられなかった。でも僕はがんばって買ったのだ。僕が選んだZIPPOは愛するロックバンド「ビートルズ」のバンドロゴが描かれたものだった。あの頃は煙草も吸わなかったが、毎日ZIPPOでパカパカ音を鳴らしては火を見て楽しんでいたものである。それだけでも満足だった。今思えば、あのビートルズのZIPPOで煙草を吸ったことはない。結局あのZIPPOは発火石が痛んだときに捨てたと記憶している。

あれから10年。僕は生涯で2度目となるZIPPOを購入することになった。今の僕にとっては、6000円という値段もさほど高いものではなくなった。葉巻1本1200円は当たり前だし、ダンヒルのガスライターだって50000円もするのだから、ZIPPOの価格はかなり良心的ともいえる。長い期間でみれば、ひょっとしたら100円ライターよりも安いのではないか? 長く使えば愛着だってわいてくる。

僕が選んだZIPPOは、「パイプ用のZIPPO」だった。大阪梅田のジッポーワールド・ナカムラより2570円で購入。正直言って、僕はこの日までパイプ用のZIPPOがあることなど知らなかった。パイプ用と普通のZIPPOの違いはインサイドユニットの穴の形状だけで、他は全く一緒。あの馴染みやすいパカッという音も変わらない。ただし、普通ならばZIPPOは縦に持つものだが、パイプ用のZIPPOは写真のように横に持つことになる。

パイプにオイルライターは使うなとはよくいったものだが、そんなルールはどこにもないはず。僕が思うに、最初は確かにオイル臭いかもしれないが(この匂いもひとつの味わいだが)、着香系の煙草ではほとんど気にならない。むしろ、その絶妙の火力は、煙草をよりおいしく火加減で焼いてくれたように思う。これは大変気に入った。

これはうまくパイプを吸うための矯正器としても使えそうだ。というのも、ZIPPOでは、マッチのように直接煙草の葉に火を当ててじりじりと焼くことができないからだ。マッチならば火をパイプの底まで近づけられるので、少し息を吸うだけでも葉の表面に火を移すことができるが、ZIPPOはそうもいかない。ZIPPOの火はパイプの内側には届かないので、弱い吸引力では火はつかない。火をスーッと奥の方へ吸い込まなければ着火できないのだ。僕は、こうやってZIPPOで火をつけることが、おいしいパイプの着火法を知る近道のひとつじゃないかとも思っている。(2006/12/18)

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